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読書感想文 「龍樹」(著:中村元) ☆5 [読書]

新聞のコラムでとある経営者が「色即是空は一種のニヒリズム」と述べてありました。

はて、「空」ってなんでしたっけ?

この本はナーガールジュナ(龍樹)の著書「中論」をベースに「空」について述べてます。



上の疑問に対して私は

「縁起せるが故に空である」

この言葉をメモしました。




ナーガールジュナは虚無論(ニヒリズム)を否定しています。

ここで虚無論は「この世界、特に過去および現在における人間の存在には意義、目的、理解できるような真理、本質的な価値などがないと主張する哲学的な立場」(Wikipediaより)ですが、

「空」は「あっちがあればこっちがある。あっちが無ければこっちも無い」という存在の相互依存、相互限定を述べており、すべて無いという立場でも、すべてあらかじめ有るという立場でもありません。

もし上の2つの立場をそれぞれ認めると、私たちの善く生きるための努力もなくなってしまいます。

何も無い、もしくは何かが有るという立場こそ人の意志を無意味にしてしまうニヒリズムになります。

本書では「もし人が空を信ぜば、かの人は一切を信ず。もし人が空を信ぜざれば、かれは一切を信ぜず」という文が引用されてます。




では「空」の立場に立つと私たちはどのように生きる事ができるのか?

「輪廻というのは人が束縛されている状態であり、解脱とは人が自主的な立場を得た状態を言うのである」(P294)

私はこれを目の前で起きること一つ一つに一喜一憂することなく、

自分の生きる事に集中できる事を意味していると考えました。

しかしそれは安易な独我論ではありません。

「私」すら縁起によって有るのならば、

「私」の意志・行動は他の人々の意志・行動から作用をうけ同時に作用を及ぼします。

このことを自覚すれば善く生きるためには自分だけではなく他人も意識する必要があります。




この本は個人のあり方が他人のあり方と共にあるという考え方が大事なんじゃないかと

考えさせてくれる良書だと思います。

龍樹 (講談社学術文庫)

龍樹 (講談社学術文庫)

  • 作者: 中村 元
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/06/10
  • メディア: 文庫

タグ:読書 龍樹
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