読書感想文 「自己の探求」中村元 ☆5 [読書]
よく「前向きに生きろ」と言われます。
しかし「前」ってどっちなんでしょうか?
親や上司が喜ぶ事? 成績や資産が大きくなる事?
どこを向いて生きればいいのか、私はこの事にかなり悩んでいます。
この「自己の探求」はそんな疑問に対するコンパスになるかもしれません。
著者はエマソンを引用して言います。
「きみ自身の思想を信じること、
きみが内心において真実であることを信ずる事ことは、
すべての人にとって真実である。」
上の「前向きの前とはどっちか?」に対して、それは自分の信じる方向である。
私はそう読みました。
しかし、なぜそう言いきれるのか?
著者はこの疑問に対して、東西の思想を比しながら順を追って論じてくれています。
ビジネス本コーナーの自己啓発書にありがちなテーマにも関わらず
この本がそれらと一線を画す理由をこの点だと思います。
そもそも自己や自我とは何かから始まり、
デカルトとインドの哲学者シャンカラが同じ論法で自己の存在を認めている事を紹介しています。
両者とも自己の存在を認め、つぎに絶対的な存在を導入しますが、
デカルトやそれ以後の流れは自己とは断絶した別の絶対的なものに発展し、
シャンカラの流れは絶対的なものを自己の延長線上に置きます。
ここから、簡易に、論理的に我々の自己がどのような存在なのかが語られていきます。
多くの文献が引用されてる本ですが、スイスイ頭に入るのが快感です。
巷には解答を与えてくれる本があふれています。
しかしそれらは他人が得た解であって私のものではありません。
そんなものを真似しても疲弊するだけです。
この本は、私が私になっていく為のコンパスであるように思います。
2013-06-27 23:01
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